法律用語としての善意と悪意

法律用語の悪意とは「事実を知っていること」、善意とは「事実を知らないこと」を意味する。
くだんのSTAP論文問題では、画像に対して悪意の改ざんがあったと指摘されたユニットリーダーが、「悪意はなかった」と釈明したのに対して、調査をした理研側が「悪意は、法律用語としての『知っていること』の意であり、故意と同義である」と説明していたのが記憶に新しい。
一般の人の感覚では、悪意とは「わざと。悪いことと知りながら。」といったニュアンスだろうから、法律用語を使ったことで、対峙する双方の認識にズレが生じていたことになる。

さて、IT業界で「悪意の」という用語を使う場合は、たいていは「悪意を持った。悪いことをする目的で」の意味である。
これは、通常マルウェアなどを指すときに使われるが、昨今はソフトウェアの脆弱性を突いたWebサイトの改ざんや、Webサイトからの重要データの窃取などの事件が多発しており、この言葉をよく見かけるようになった。
「悪意の第三者による不正アクセス、コンピューターウィルスへの感染等のトラブル」といった言い回しも良く目にする。
しかしながら、「悪意の第三者」のような表現形式は、どちらかというと法律の文章によく見られるもので、法律の説明の中で使われる場合は、冒頭で紹介したように「事実を知る第三者」の意味である。すなわち、IT業界における「悪意の第三者」の使い方は、誤解を招く使用方法と言えるのかもしれない。

法律用語には、私たちのような法律が専門でない人間から見ると意味が分かり難い用語が多くある。
また、一般的な用語の意味や語感とは異なる用法もある。
例えば、「又は」と「若しくは」は、法律用語として同一ではない。大きな選択的連結には「又は」を使用し、小さな選択的連結には「若しくは」を使用する。
民法13条1項6号「相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割・・・」

「~の場合」と「~のとき」も同じではない。
法律上は条件が2つ以上あるケースで、大きい条件は「場合」を、小さい条件は「とき」を用いる。

法律は、知らなかったでは済まされないから、仕事や身近の生活に関係する法律については、最低限の知識は持っておくべきだろう。ほとんどの企業人が関係するのは、民法、商法、会社法、労働法、知的財産権に関わる法律、あたりではなかろうか。
「みんなが欲しかった! 法学の基礎がわかる本 (TAC法学研究会)」(TAC出版)は、民法、商法などの解説書を読む前に、法学の基本知識として押さえておくべきことが書かれており、専門外の人間には参考になる。
先に引用した「悪意」や、「又はと若しくは」なども本書の中で分かり易く解説されている。

今ホットな話題に集団的自衛権の憲法解釈があるが、より前段の「自衛権」について法律上はどのような扱いになっているのだろうか?
憲法に直接の記載があるわけではない。
「面白いほど理解できる憲法」(早稲田経営出版)によれば、
自衛権とは、外国からの侵害に対して自国を防衛するための手段・行動を行使する権利で、自衛のための限度を超えないために次の要件が必要です。

  1. 防衛行動以外に手段がなく、止むを得ないこと
  2. 外国からの侵害が急迫・不正で違憲性があること
  3. 防衛行動が侵害を排除するのに必要な限度であること(やり過ぎでないこと)

「憲法にこうした自衛権を直接明示する規定はありませんが、これらを満たす自衛権は、独立国家であれば当然有する権利であり、認められるでしょう。」
集団的自衛権の前段である自衛権自体、相当の制約が課せられていることが分かる。集団的自衛権の是非や適用条件を考えるときは、「戦力」や「自衛権」についての憲法解釈に関わる歴史的経緯を改めて検証する必要がある。

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