2019年 9月

ある記事によると日本には6,800以上の島があるそうだ(周囲が0.1km以上のものを島というようだ)。
「幻島図鑑 不思議な島の物語」(清水浩史:著、河出書房新社)は、日本の離島のなかから特に「幻島」と呼ぶにふさわしい島を著者が選び出し、紀行文と写真、解説を添えた書籍である。幻島という呼称は多分、著者の造語であろう。著者はその定義を次のように述べている。幻島図鑑
「はかなげで(人口が少ない、もしくは無人島、無人化島)、希少性がある(珍しい名称・フォルム、稀有な美しさ、知られざる歴史を有する)小さな島」
「いわば海に浮かぶ泡沫のような島」
著者が選んだ「幻島」は17島(北海道:1、東北:1、北陸:1、東京:1、中国地方:3、四国:1、九州・沖縄:9)である。九州(6島)、沖縄(3島)が特に多い。
このなかで、無人化しつつある島の高齢化と過疎化の勢いが凄まじい。まるで、少子高齢化と地方の過疎化が進む日本の縮図を見るようだ。
そして過疎化が進む島の様子はまさに諸行無常、著者が言うようにどこかはかなさを感じさせる。
本書で取り上げられている無人化島(無人化しつつある島)のいくつかを紹介すると以下の如くだ。 

六島(長崎県)は、1960年ごろ約260名が島で生活していたが、その後、1995年には56名、2010年には23名、2018年にはたったの3名(2世帯)に急減している。

蕨小島(長崎県)は、日本で一番小さい有人島だそうだ。島の周囲は1.8キロである。この島には1995年に21名が住んでいたが、現在は7名(3世帯)のみが生活している。この島には、人口が少ないせいなのだろうか、定期航路がなくアクセスは極めて困難なようだ。
著者による紀行文には十字架が並ぶ墓地の写真と解説が載っており、この島における潜伏キリシタンの歴史が綴られている。キリシタン弾圧のなかで信仰を守った人々の暮らしに思いを馳せるとどこか切ない。まさに幻島の名にふさわしい(と、感じた)。

黒島(長崎県)は、1955年の人口が190名、その後、1965年に109名、1975年に89名、1995年に26名、2013年に3名(2世帯)、そして2014年からは2名(1世帯)に激減している。さらに現在(2019年)は1名になっている。この1名は女性である。
たった一人で島に住むことに不安はないのだろうか?  著者によれば、ご本人は独りで気楽だと仰っているそうだが・・・・。自分だったら耐えられるだろうか?

このように離島で過疎化が急速に進むロジックを著者は次のように記している。
「子どもが大きくなると島を出て仕事を見つける。高齢となった親は、通院の必要が生じるなどすると、子どもの近くで暮らそうと島を出ていく。とくに若い人が減ってくると、高齢者の不安が募ることは想像に難くない。連鎖するように、ひとり、またひとりと島を出ていく。まだ身体が動くうちに、と。」
Web上の記事・論考を調べてみると、離島の過疎化には行政の推奨(指導?)によるものもあったようだ。
行政の推奨で集団で離島したために無人島と化した例があるようだ。島と島民、それぞれの事情があったのだろうと思うが、私は研究者ではないのでこの点にはこれ以上立ち入らない。

地図上にはあるが実在しない(海面下に沈んでしまった)島もあるそうだ。
著者は、「エサンベ鼻北小島」を実際に目に留めようと、日本最北の村、北海道猿払村に向かう。ところが、近くの港からいくら目を凝らしても島影がない。・・・どうやら海面下に没してしまったようなのだ。離島は、領海や排他的経済水域(EEZ)を確保する際の基点になり得るから、島が消滅するということは由々しき事態なのだろう(多分)。
本書にも記載があるが、政府は2014年、領海や排他的経済水域 の問題に対処するために、正式な島名が無かった小島や岩礁に命名するとともに、所有者がいない場合は国有財産化する手続きをとっているようなのだ。単なる無人島だと侮ってはいけない、ということだろう。

本書で紹介されている島々のなかで、私が知っている(行ったことがある)のは見附島(軍艦島)だけである。

見附島

見附島 (石川県珠洲市)

見附島は奥能登の景勝地として知られるが、その威風堂々たるフォルムの故、著者は「幻島」に選んだ。この島は自然が作り出した軍艦のような形状から軍艦島とも呼ばれている。見附島は、昔は陸続きだったが、柔らかい珪藻土でできているため、長い年月をかけて浸食されて島になった。いまも地震の影響や風化で少しずつ小さくなっているという。
見附海岸から島までは踏み石が敷き詰められてるので、運が良ければ島に渡れるそうだ。著者は実際に島の絶壁まで近寄っているが、私を含め一般の人は危険なので止めた方が良い気がする・・・。(近寄れたとしても、そこには人を寄せ付けぬ絶壁があるだけだろう)

本書には幻島の島々の歴史や、著者が実際に上陸、もしくは接近した際の様子、島民との触れ合いが書かれている。離島に対する著者の熱い情熱を感じさせる一冊である。

 

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