2052年の予測 その1:人類は地球の天敵なのだろうか?

自然界の動物にはそれぞれ天敵がいるが、人間には天敵がいない。いや、人間の天敵はウィルスである。
という類の話をよく聞くが、そもそも「人間は地球にとっての天敵ではないだろうか」と思わせることが、ヨルゲン・ランダース「2052今後40年後のグローバル予測」には書かれている。
以下、本書からの引用部分は「」で記載する。

2052

2052 今後40年のグローバル予測

今後40年に起きる気候変動を考えると、今年(2013年)顕著であった異常気象などは、まだまだ序の口のように思えてくる。
今年顕著であった異常気象の一つが突風や竜巻である。
竜巻で家が倒壊するなどというのはアメリカ大陸の話であって、日本では今まで考えられなかった話である。
台風も巨大化しているように思える。集中豪雨による土砂崩れや、河川の氾濫などで大きな被害が出た。
(日本ではないが)フィリピンでは、台風の被害としては想定を超える、大規模な被害が出たことは記憶に新しい。
かつては異常気象の一つと考えられたゲリラ雷雨は、今では日本の夏の気象としてすっかり定着してしまった。
このように、異常気象は年々拡大しているように思える。40年後は一体どうなっているのだろうか。

気候変動が地球および人間にとって最大級の脅威であることは広く知られるところである。
「2052年、人間は既に危険な閾値に足を踏み入れている。気温は工業化前の時代よりもすでに2度以上高くなっている。」
2度程度ならたいしたことはない・・・、などと思ってはいけない。
「海面は、2000年時より36センチメートル、工業化前の時代より56センチメートル高くなる。pH(水素イオン指数)は8.05から7.97になり酸性が進む。」
この結果
「かつてない規模の洪水、干ばつの多発、地滑り、トルネード、ハリケーン、サイクロンといったひどい天災が頻発するようになり、サンゴは白化し、森林は枯死し、新しい虫が繁殖する。」
「北極圏で夏に氷が溶ける。北極圏以外の氷河の大半が消滅する。気候帯が南北に100キロメートル移動する。」
温暖化が進むことで、2052年までに地球上の生物の4分の1が消滅する可能性があるという。
今現在でも、自然に引き起こされる絶滅の1000倍の速さで種が失われている。

この気候変動による自然災害や種の消滅は、そのスピードをさらに加速する可能性がある。
その鍵を握るのが”気候変動の自己増幅”である。
21世紀後半に”気候変動が自己増幅”し始めるか否か、が危機的状況の大きな分かれ目になる。
「つまり私たちは崖っぷちにいるわけだ」
「気候変動の自己増幅とは、現在の温暖化がさらなる温暖化を招き、その影響でますます温暖化が進むという、制御不能の悪循環が始まることを言う」
「分かりやすい例は、ツンドラの南の縁が溶けることで、強力な温室効果ガスであるメタンが放出されて気温が上昇し、さらにツンドラが溶けるというものだ。この悪循環はツンドラがすっかり溶けてしまうまで続く。計算によると、最悪の場合、放出されたメタンの温暖化効果はCO2の2倍になると予想される。」
”気候変動の自己増幅”が始まると、人間にはもはやこれを止める術がない。

種の絶滅や生態系の破壊は、当然ながら人間の食糧事情にも打撃を与えることになる。
海水魚の漁獲量は既に頭打ちで、2052年までに激減する恐れがあるという。但し、海洋資源がどのように変化するのかを予測することは非常に難しい。
「魚資源は変動しやすい。海洋では、繁殖と捕食による個体数の増減が、地上とは比較にならないスケールで起きる。また、個体数は海流、養分、温度の変化によっても大きく変動する。このため、漁業を計画的に行うのは難しい。」
「海洋資源の食物連鎖はあまりにも複雑で、現在の知識で測れる範囲を超えているだけでなく、計算し予測すること自体が不可能に近い。」
「最も気がかりな脅威の中には、数値化が難しいものがある。例えば、海洋の酸性化は深刻な問題だが、それが現在どこまで進行しており、将来どんな影響を及ぼすのかは不明である。」

21世紀後半は、気候変動の自己増幅と食糧事情の悪化で、人類は危機的な状況に陥る可能性があるわけだが、さて、その可能性(確率)はどのくらいなのか?
人類も馬鹿ではないから、危機が訪れる前に対策を打つはずだ、と考える方も多いだろう。
しかし、残念ながら本書の予測では、危機に陥る可能性はかなり高そうである。
その理由は、主に人間の行動や、市場経済の行動原理が非常に短期思考であり、目先の費用対効果で意思決定するところにある。
個人の行動に当てはめると、試験が近づかないと勉強しない、締め切り間際になって慌てる、といった行動原理に似ている。
企業の行動に当てはめるなら、四半期ごとの成果(売上高や利益、利益率)を追いかけるのに精一杯で、長期的な将来の利益に向けた投資には目が向かないということになる。
特に将来の利益が、自社にとっての利益というよりは、地球環境や人類全体にとっての利益である場合、なおさら力が入らないと考えられる。
つまり、市場経済任せでは対策は間に合わないので、国が強力に介入する必要があるというわけだ。

結局のところ、
「地球規模の変化を引き起こしているのは、間違いなく人類だ。
私たちは”アントロポセン(人新世。人類が地球環境に大きな影響を及ぼすようになった地質時代のこと)”を生きていることを痛感させられる。」
のである。


2018年8月 追記:「危険な暑さ」 

2018年の夏は記録的な猛暑となった。
7月23日、埼玉県熊谷市など4地点で40度以上の最高気温を記録、特に熊谷市は国内の観測史上最高を更新する41.1度になった。また、東京都青梅市では都内初の40度超えとなる40.8度を記録した。
気象庁は、命に危険が生じる暑さが続き、もはや災害と認識するべきだと発表した。これ以降、テレビの天気予報で「危険な暑さ」という表現を多く耳にするようになった。「危険な暑さ」などという表現は(私の知る限り)過去には無かったことである。
連日の猛暑で、熱中症により救急搬送される人も増えた。読売新聞デジタルによると、7月24日時点で、熱中症のために8府県で13人が死亡。8都県で18人が重体となり、搬送者は全国で2,549人に上った。
2018年の猛暑は日本だけではない。
国連の世界気象機関(WMO)によると、2018年6月~7月は北極圏を含め世界的に気温が上昇し、異常な猛暑に見舞われている。ノルウェーとフィンランドの北極圏で7月、気温が33度に達した。スウェーデンでは約50件の森林火災が発生した。
北アフリカのモロッコとアルジェリアでは43.4度、51.3度とそれぞれ最高気温を更新。カナダでは東部のケベック州で日中の気温が35度を超える日が続いた。
WMOは「温暖化ガスの増加による長期的な地球温暖化の傾向と関係している」と指摘している。

 

「人新世(アントロポセン)」:
人新世に関して、8月20日の朝日新聞に桑田学氏の談話が載っていた。約1万1700年前から続く「完新世」が終わり、「人類の時代」を意味する新しい地質年代に入ったのではないか、と世界の研究者の間で議論されているという。
世界規模の気候変動の責任は、人類一般の責任というよりは、西洋近代の資本主義と切り離せない点から「資本新世」と呼ぶべきである、との主張もあるそうだ。 


2019年5月 追記(地球温暖化や環境問題をめぐる最近の動向) 

近年、SDGs(持続可能な開発目標)や、パリ協定(今世紀末までの気温上昇を産業革命前と比べ2℃未満に抑えることを目標とする)に対する関心が高まっている。
「ESG投資」という言葉も最近よく話題になる。ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字で、気候変動対策や省エネなどに取り組んでいる企業に対して積極的/選択的に投資するものである。企業も環境問題に対して積極的に取り組むことが求められている。
地球温暖化対策としては、CO2の排出量を抑えるだけでなく、大気中のCO2を回収する研究や、これを実証するスタートアップ企業も出てきている。

一方、CO2の排出に伴う地球温暖化に関して、懐疑的な見方をする人もいるようだ。少々古い書籍だが、「科学101の未解決課題」(ジェームス・トレフィル 講談社ブルーバックス)で、著者は懐疑的な意見を紹介している。
一般に、地球の気候や平均気温は常に変動するものであり、数百年、数千年にわたって数度程度の変化はごく普通のことである。懐疑派は、温暖化と人間の活動の間の因果関係を実証できるのかを疑っているようだ。
人間の活動とCO2の排出量、これらと温暖化との間に相関関係があったとしても、その因果関係までを実証できるのか、という問いかけのようだ。
このような懐疑的な見方は、マスコミで取り上げられることがほとんどない(なんでもかんでも地球温暖化と結びつけるのは、根拠の明瞭性という点で、それはそれで問題なのかもしれない)。

地球温暖化が進行することで絶滅種が増えるという問題も、度々ニュースで報じられる。しかし、もともと人類は地球という惑星の歴史上、もっとも危険な種であることが指摘されている。
「サピエンス全史」(ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社)によれば、ホモサピエンスがオーストラリア大陸に渡ったとき、狩猟採集民によってオーストラリア大陸にいた多くの大型動物が絶滅したそうだ。
狩猟採集民の広がりに伴う絶滅の第一波があり、その後農耕民の広がりに伴う絶滅の第二波があり、そして今日の産業活動が引き起こしているのが絶滅の第三派である、と著者は指摘している。

地球温暖化以外の環境問題として、最近ニュースで取り上げられることが増えているのがマイクロプラスチックの問題である。マイクロプラスチックとは、海に流れ着いたプラスチックごみが紫外線や風波などで細分化され、直径5ミリ以下のプラスチック片になったものである。これが魚介類に取り込まれ、これを食する動物や人間にも取り込まれるリスクがある。
プラスチックごみは、レジ袋やペットボトル、プラスチックの弁当箱などで、毎年800万トンが海に流れ出しているという。
プラスチックごみ(廃プラ)は日本でもリサイクルが追いついていない。廃プラの主な輸出先だった中国が輸入規制に踏み切ったことや、マレーシア政府が違法な廃プラを輸出国に送り返すと表明したことなどがニュースで報じられ、人々の関心を集めている。

 


2019年8月 追記 

新海誠監督によるアニメーション映画「天気の子」が7月に公開された。作品の後半(東京の下町や都心部までが海水に侵食される)、新聞記事の見出しに「アントロポセン」の表記があることが確認できる。このことから、人類による環境破壊に対する戒めが本作品の一つのテーマだと推測できる。アントロポセンという用語が社会に認知されてきている、と言えそうだ。

 


2019年10月 追記 「学校ストライキ」 

ウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが2018年8月、地球温暖化に対する政府の無策に抗議するため、一人で学校を休んでストックホルムの国会議事堂前に座り込み、気候危機の影響を受けるのは若者だと訴えた。この抗議運動はSNSを通じで世界に拡散し、世界各地の高校生や大学生が「未来のための金曜日」と称して、毎週金曜日に授業をボイコットする「学校ストライキ」が始まった。
2019年9月の国連気候行動サミットを前に、若者が政治家に気候危機への対策を求める世界一斉デモが2019年9月20日、163か国・地域で行われた。(出典:朝日新聞2019年9月21日)
地球温暖化に対する若者の抗議活動は世界各地で広がっているが、日本ではまだまだ関心が低いようだ。


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