2052年の予測 その4:原子力発電と太陽光発電
次の東京都知事選挙では原子力発電(電力エネルギー)に関する政策方針が争点の1つになるらしいが、ヨルゲンランダース著「2052 今後40年のグローバル予測」にも、将来のエネルギーに関する予測が載っている。 また、電力エネルギーに関して、識者による以下の論考も掲載されている。 1つは、イギリスのジョナサン・ポリットによる「原子力発電の終焉」、 今1つは、ノルウェーのテリエ・オスムンセンによる「太陽光発電への道」である。 エネルギーに関する大きなトレンドは、気候変動をもたらすCO2の排出を削減する方向、即ち化石燃料から再生可能エネルギーへの移行である。 (以下、本書からの引用部分で数値に若干の不整合があるが、本書のままである) 「原子力発電の終焉」は、少々極端な予測かもしれない。 「2052年の時点でまだ原子力発電を続けているのは、フランスと中国だけになるだろう。さらに、両国とも、2065年までに原子力を全廃すると思われる。」と予測している。 ジョナサン・ポリット氏は、2052年に原子力発電がほぼなくなる理由を3つあげている。 1つは、財政的な問題。政府の補助金なしで作られた原子炉は、世界のどこを探しても存在しない。 政府が補助金を出して投資リスクを軽減しない限り、投資家はリスクの大きい原子力発電所の建設に手を出さない。 2つ目の理由は、安全な低炭素社会における貢献度が極めて低くなるからだ。 原子力発電の発電量は、世界全体の発電量の13%を占めているが、商業エネルギーとしては5.5%で、すでに重要性が失われている。 今後、古い原子炉が寿命を迎えていく中で、現在と同じ5.5%の発電量を維持していくのは難しい。 むしろ、廃炉による不足を化石燃料(火力発電等)で埋める可能性すらある。 3つ目の理由は、原子力発電所がテロ攻撃に弱いからだ。 原子力発電所には、サイバー攻撃や、物理的攻撃のリスクがある。 物理的な攻撃では、原子炉だけでなく、隣接する核燃料貯蔵施設を狙われるリスクがある。 「ドイツが原子炉なしで成功していることもあり、今後10年から15年の間、新たな原子炉はほとんど建設されないであろう。」と予測している。 ヨルゲンランダース氏による予測は上記ほど極端ではないが、2052年時点の原子炉の数は、3分の1程度減って約300基、その大半が中国をはじめとする新興国に集中する。 また、総エネルギー供給量に占める原子力発電の割合は3%以下で、現在の2分の1程度とみている。 「太陽光発電への道」は、その表題の通り、今後太陽光発電のコストが低下することで、世界全体の発電量に占める太陽光発電の割合が、現在の0.1%から20%ないし25%に増加すると予測している。 但し、化石燃料から一気に太陽光発電に移行する訳ではない。 世界の多くの場所でシェールガスが発見されていることから、まず石炭からガスへの切り替えが進む。 ガス発電設備は比較的簡単に稼働したり停止したりできるため、風力や太陽光による”発電のばらつき”を埋め合わせるのに最適である。そこで、「太陽光・ガス」や「風力・ガス」といったハイブリッドの発電所が数多く建設されると予測している。 現在の世界のエネルギー使用量の約87%は、石炭、石油、ガスの化石燃料である。 残り13%のうち、5%が原子力エネルギー、8%が再生可能エネルギーである。 再生可能エネルギー源には、バイオマス、水力、風力、太陽光がある。 これが、2052年の予測値では、 再生可能エネルギー:37%、石炭:23%、ガス:22%、石油:15%、原子力:2%、となっている。 これは、今後、風力発電と太陽光発電が急速に増えるとの予測からであるが、再生可能エネルギーが37%という割合は、低炭素社会の実現に向けては、まだまだ低過ぎる数値のようだ。 |