2015年問題(ITエンジニアが不足する?)

2015年問題とは、2015年~2017年にかけて、ITエンジニアが決定的に不足する問題のことだそうである。
国内景気と企業のIT投資が回復傾向にあるなか、大規模なシステム開発プロジェクトが同時期に集中するためにITエンジニアが不足するというわけである。
なお、2018年以降はこの反動でITエンジニアが余剰になるという予測もあるらしい。
このような労働力不足はIT業界に限った話ではない。身近な例では牛丼チェーン店のアルバイト店員が不足して、休業せざるを得ない店舗がでた。深夜時間帯のアルバイト賃金を大幅に増額しても人が集まらないという。
建設業界も深刻な人手不足である。
東日本大震災からの復興に加え、2020年の東京オリンピック開催の決定など、建設需要が増加している。
その一方で人手不足は相当に深刻化している。建設業界は、建築資材の高騰と労務費の高騰のダブルパンチである。
職人不足の影響は、労務費の高騰や工期の延長・長期化にとどまらない。
建築の品質低下も懸念されている。優秀な職人が集まらないから、建築物の品質を維持できないという論理である。
このような話を聞くにつけ、東京オリンピックに向けた建築物や道路の整備が、果たして間に合うものなのか、いささか気になるところではある。
さらに、この建設業界の人手不足は小売業の店舗建設計画などにも影響を与えることから、他の業界の設備投資計画を阻害し、成長を妨げる要因にもなりかねない状況だそうである。
上記3つの業界に共通しているのは、3K(きつい 、汚い、危険)、もしくは新3K( きつい、帰れない、給料が安い)と呼ばれる仕事に該当していることである。
3Kや新3Kに該当しない仕事、例えば事務職などでは、労働需要に対してむしろ供給過多の仕事もあると聞く。

日本の場合、既に言い尽くされていることだが、少子高齢化の進展により人口(特に生産年齢人口)の増加は望めない状況にある。国内の生産年齢人口は1990年代をピークに減少傾向が続いている。
これに対して、政府が初めて「50年後も人口1億人」を維持するという人口目標を掲げたことがメディアで報じられた。しかしながら、成長戦略に盛り込まれる具体案は当面の人手不足に対する対策が中心で、抜本的な対策には至っていない。
人口減少による経済成長の鈍化は、日本だけの話なのだろうか?
世界全体でみた場合、今後の人口の伸びはどの程度なのだろうか?
ヨルゲンランダース「2052 今後40年のグローバル予測」によれば、全世界の人口は思いのほか早い時期に頭打ちとなる。
「世界の総人口は、2040年に約81億人で頭打ちとなり、2052年には現在の水準にまで下がる。
また、過去40年間の特徴であった労働生産性の減速傾向は続く。そして、2052年には世界経済の成長は止まる。その原因は、人口と生産性の伸びが減速するからだ。さらに、資源の枯渇が、生産性向上の減速に拍車をかける。」
日本では人口の減少と老齢化の進展が経済成長を止める(例えば、国内の自動車需要は急速に減少する)ことが危惧されているが、これは日本に限った話ではなく、世界全体で見た場合でも、2052年頃には経済成長は止まる可能性があるわけだ。

話を2015年問題に戻す。先に記した日本及び世界の人口の趨勢をみると、IT業界の労働力不足は2015年~2017年に限った話ではなく、長期的なトレンドとして人手不足の状態が続くと見る方が妥当ではないだろうか。そしてこれはIT業界に限った話ではなく、先に紹介した建設業やサービス業など、人手を要する業種で同様の傾向になると考えられる。
では、ITエンジニアの不足に対する対策はあるのか?
1つは従来から行われているオフショア開発など、日本以外の労働力を頼みにする方策である。
今までは中国へのオフショアが中心であったが、中国の経済事情はここ5~6年で大きく変容しているらしい。平均賃金は約2倍に高騰しているし、中国国内でも人手不足を訴える業種が出始めているようだ。
中国へのオフショアは、開発コスト上のメリットが相当に低下している。
ITエンジニア不足に対する今ひとつの対策は、(これも従来から言われていることではあるが)自動化を含む生産性向上対策と、パッケージ製品や既存資産を活用する対策である。
LinuxやApacheなどで始まったオープンソース(OSS)の流れは、その後ミドルウェアやアプリケーションのレイヤーへと広がり、さらにシステム開発環境やシステム運用環境などにも広がりを見せている。
OSSの普及は、分散開発やテスト駆動開発など、開発スタイルの革新を促し、自動化や生産性向上を後押ししている。
また、クラウド上のパッケージ利用や、業界内でのシステムの共同開発・共同利用なども今後さらに増えると考えられる。

 


2015/7/18追記(オフショアに関して)
オフショアや海外移転は製造業にも見られる現象である。この戦略のデメリットは、①海外とのコミュニケーションに齟齬が生まれ、ひいては品質問題を引き起こすことがあること、②国内の職人のスキルが維持できなくなること、などである。
このため、一部の製造業では海外移転した仕事を国内に戻す動きもみられる。これを「リショアリング」と呼んでいる。
システム開発でも同じような動きが起こる可能性はあるだろう。


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