ハードウェアのソフトウェア化

人工知能は人間を超える?」のブログ記事に、「コンピューターの処理能力がムーアの法則に従って向上していくと、2045年には・・・・」と書いたのだが、実はムーアの法則はそろそろ限界に達してきているらしい。
ムーアの法則とは、「半導体の集積密度は18~24ヶ月で倍増する」というもので、米インテル共同創業者のゴードン・ムーア氏が1965年に提唱した法則である。
今まで、パソコンやサーバのコストパフォーマンスはこのムーアの法則の予測通り、1年半~2年でほぼ倍増してきた。しかし、ムーアの法則は半導体の微細加工技術の向上を前提としているため、微細化が原子レベルにまで到達すると限界に達する。
その限界がそろそろ訪れているようなのだ(2020年までにコストパフォーマンスの向上は頭打ちになるという)。だからといって、これでコンピューターの性能向上が止まるかといえば、決してそういうことではない。

日経コンピュータの記事によれば、ポスト・ムーアを標榜する幾つかの新しいアーキテクチャー(設計思想)が出現している。その1つが「ニアデータプロセシング(NDP)」である。
NDPは、DRAMやフラッシュメモリーなど、データを保存するデバイスのできるだけ近くにCPU/GPUを配置することで、移動するデータ量を最小限にする。現在のコンピューターのアーキテクチャーでは、ストレージからメモリー、メモリーからプロセッサへとデータを移動するのに多くの時間と電力を消費している。
NDPは、このデータの移動を少なくするよう設計されている。
NDPにも関連するのだが、いまひとつ注目すべき技術の1つが半導体技術のFPGAである。FPGAは「Field Programmable Gate Array」の略で、製造後に内部の論理回路をプログラミングして再構成できる集積回路のことであり、広義にはPLD(プログラマブルロジックデバイス)の一種である。
FPGAの歴史は意外と古く、米ザイリンクスが1985年に販売したXC2000が世界初のFPGAだと言われている。日経コンピュータの記事によれば、FPGAの有望な用途として期待を集めているのが、CPUに代わって特定の演算を担うアクセラレータとしての用途、特にディープラーニングの演算のようだ。
「米マイクロソフトは2015年2月、これまでのCPUに代わって、FPGAを使い、ディープラーニング(多段ニューラルネットによる機械学習)演算を実行する研究成果を報告した」とある。
また、「FPGAによるディープラーニング演算は、外部のメモリーに保存したプログラムではなく、内部に刻まれた論理回路に沿ってデータを処理する「非ノイマン型」のアーキテクチャーだといえる」と解説している。
すなわち、外部のメモリーと頻繁にデータを出し入れする必要がないので、その分消費電力を抑えられるという。
FPGAの進展を後押ししているのが開発フレームワークである。
今までは、HDL(ハードウエア記述言語)のような専用言語で回路を設計するのが一般的だったが、C言語ベースの開発フレームワーク「OpenCL」の登場により、回路設計における技術的な敷居が下がったという。
「マイクロソフトや百度が手がけたFPGAのディープラーニング演算は、このOpenCLで回路を設計したものだ。アルテラと並ぶFPGAベンダーである米ザイリンクスも、2014年11月にOpenCL、C、C++対応のFPGA開発ツールSDAccelを発表した」
ポスト・ムーアの新しい市場を開拓するためには、ハードウェアベンダーとソフトウェアベンダーの協調が不可欠になる。

FPGAは回路をプログラミングして再構成することから、集積回路のソフトウェア化とみることができる。最近は、ネットワークやハードウェアのソフトウェア化が進んでいる。「SDx」と称されるものである。
SDN:Software-Defined Networking (ネットワークをソフトウェアで制御する)
SDS:Software-Defined Storage (ストレージをソフトウェアで制御する)
このほかにも、Software-Defined Data Centerや、Software-Defined Computeなどの概念があるようだ。
このようなハードウェアのソフトウェア化の動きは、ハードウェアベンダーに大きなインパクトを与えている。今までハードウェアベンダーは、ネットワークスイッチや、ストレージ、SAN(Storage Area Network)など、専用のハードウェア装置を提供し、それが市場における強みになっていたが、今後はそうはいかなくなる。ソフトウェア化の対応を迫られることで、ハードウェア固有技術での差別化が難しくなるだろう。さらに、より多くのソフトウェア技術者が必要になると考えられる。

ムーアの法則終焉後のアーキテクチャ競争と、ネットワーク、ハードウェアのソフトウェア化は、ベンダーの勢力図を塗り替える可能性すらある、大きな変化(大げさに言えばイノベーション)といえるだろう。

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