個人事業主の決算から確定申告まで

2023年7月12日

(2013/12/22 :復興特別所得税について追記)
(2015/02/08:2017年に向けて、電子納税の方法が改善されることを追記)個人事業主の、決算から確定申告までの流れを概説する。
なお、税務関係の不明点は、Webで検索すれば税理士の方の回答などが参考になるが、正確な情報は国税庁のサイトから入手するか、直接所轄の税務署に問い合わせることをお勧めする。
理由は、
・税法は毎年何らかの改正があるので、Web上の情報の中には最新でない情報も存在する可能性があること。
・税務関係に限らず、Web上の情報は必ずしも正確であるとは限らないこと
である。
そのような訳であるから、ここに記している情報も、正確であるよう留意はしているが、絶対ではないので、他の情報も参考にされたい。
さて、個人事業主の所得であるが、事業による所得の他に給与所得などがある場合には、事業所得と給与所得など他の所得を合算する必要がある(事業所得、不動産所得、給与所得などは「総合課税」である)。
所得とは、簡単に言えば収入から必要経費(事業に必要な費用)を差し引いたものであり、給与所得の場合は「給与所得控除後の金額」がこれに該当する。
なお、必要経費は、会計上の費用と税務上の費用(これを損金という)は同一ではないので、注意する必要がある。

事業所得については、弥生会計などの会計ソフトを使用している場合は(日々の取引の仕訳を全て入力し終わっている前提で)、決算仕訳をして青色決算申告書(損益計算書と貸借対照表)を作成すれば終わりである。
なお、青色申告の場合は、青色申告特別控除(65万円)が利用できる。
(注:事業規模に満たない不動産所得の青色申告特別控除は10万円)

所得を求めたら、「所得から差引かれる金額」を計算し、所得から差引く。
所得から差引かれるものには、基礎控除や社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、地震保険料控除などがある。

ここまでで、「課税される所得の金額」が求まるので、これに税率を掛けて「税金の額」を算出する。
なお、住宅ローンを利用してマイホームの新築、取得又は増改築をした場合の「住宅借入金等特別控除」などの特別控除がある場合は、税金の額から特別控除分を差引く。

なお、平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生じる所得については、復興特別所得税が課税される。復興特別所得税を含めた税金の合計額は、
合計税率(%) = 所得税率(%) * 102.1%
となる。

事業所得とは別に給与所得があり、給与所得から源泉徴収されている場合は、源泉徴収分は既に納税した部分であるから、税金の額からこの分を差引く。これが納税額である。

以上の計算手順から分かるように、事業所得が赤字の場合は、源泉徴収分の所得税について還付請求できる場合がある。

所得税の計算フロー

e-Taxの利用


2015年2月8日 追記
日経新聞デジタル版によると、政府は2017年からインターネットによる納税を、より使い易いものに改善するそうだ。
記事によると、個人や自営業者の所得税申告のうち、ネットによるものは、2013年度で51.8%だそうだ。しかし、個人が自宅のネットで申告した割合は電子申告のわずか8%にとどまっている!(予想以上に低調であることに驚く)なおこの記事には自宅からの申告が低調な理由として「ICカードリーダーを用意しなければならないことが大きな理由とみられる」と書かれているが、これは少し違うだろう。ICカードリーダーの購入費用とほぼ同等の金額が税額控除可能だからだ。

電子納税の改善ポイントは、

  1. 携帯電話で本人確認が出来るようにする。
    現在は下のブログ記事にも書いたように、役所で電子証明書を取得して、PCに接続したICカードリーダーでこれを読み込ませるなどの手続きが必要である。
  2. 住宅借入金等特別控除などの申請で必要となる書類は、PDFファイルにして電子的に送付することが可能になる。
    現在は、紙の書類を税務署に持参するか、郵送しなければならない。

e-Taxを利用すれば、確定申告はパソコンからの操作だけで完了する。
但し、電子証明書の取得やクライアントソフトのインストールなど、事前準備が少々煩雑なのと、国税庁のサイトの説明が分かり難いためか、さほど普及していないように見える。
(所得税申告におけるe-Taxの利用率は、公称で平成22年度43.7%)
また、電子証明書の有効期限が3年間なので、3年後にまた役所に行って手続きしなければならない点も、普及を阻害している要因かと思われる。(注:且つ、更新した電子証明書を、e-Taxソフトを起動して申請しなければならない)

さらに、住宅借入金等特別控除など、添付書類の提出が必要な場合は、別途所轄税務署に添付書類を郵送する必要があるので、このような場合は確定申告書と添付書類を直接税務署に持って行った方が早いかもしれない・・・。

結論、事前準備が終わっており、且つ添付書類が不要なケースではe-Taxは便利、といったところでしょうか。


e-Taxの処理フロー

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