「はれのひ」事件にみる社会構造上の問題

振袖レンタルの会社「はれのひ」が成人式当日に突然店を閉じ、多くの新成人が晴れ着を着られなくなった。その後のマスコミ報道で、「はれのひ」の 負債額は約6億3500万円、債権者は約1600人になることなどが明らかになりつつある(負債総額はその後増えている)。
この会社は事件が起きる1年ほど前から経営状態が悪化していたようで、そのことを社長も自覚していたようである。
被害者の中には2年前から予約をしていて、既に数十万円を振り込んでいた人もいるそうだ。会社から見ればこれらのお金は前受け金であるが、想像するに、会社はこれらのお金を既に運転資金として使ってしまったのではないかと思われる。
昨年末時点で、社員の給与や取引先への入金なども滞っていたというから、キャッシュが不足していたことは間違いなさそうだ。

この事件を財務会計の面からみると、2つの問題点があるように思う。一つは消費者が会社の財務状況を知りえなかったという問題、いま一つは、財務・会計に関する教育の問題である。

1)消費者が会社の財務状況を知りえなかったという問題

上場企業の場合は会社の財務状況を調べるのは比較的容易い。財務諸表(貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)など)はネットで検索すれば容易に得られる。
B/S、P/Lについて過去3年程度を調べればその会社の財務状況(長期、短期の借入金残高や自己資本比率など)や売上高、損益額、および売上や損益の成長性などがある程度判断できる。
一方、会社が中小企業や非上場企業の場合、財務諸表を入手するのは容易くない。多分、入手できるとしてもそれなりに費用が掛かるだろう。
一般消費者が費用を支払ってまで会社の財務諸表を入手するとは考えにくい。しかし、売買契約・レンタル契約を結ぶ際、その会社の経営状態が悪いことを知っていれば契約は結ばないだろう。
つまり、高額な前払い取引を行う場合には、消費者が容易に財務諸表などを得られる仕組みが必要だと思われる。
もちろん、その会社が粉飾していれば財務諸表を入手できたとしても経営の実態は分からないわけだが、この点は大企業であっても同じである。
できれば、その会社の法人税申告書を閲覧できるようにするのが良いと思う。利益が出ていないのに利益が出ているように見せかけた場合(粉飾した場合)には法人税を払わなければならなくなる。そうまでして粉飾するケースは少ない(そうまでする動機がない)と考えられるからである。
このような仕組みや制度がないのは、社会構造上の問題といえるのではないだろうか。
この種の高額の前受け金が発生する業態として思い浮かぶのがエステサロンや外国語学校などである。
2007年外国語学校のNOVAが破産。戦後最大の消費者被害と報道されたが、前払の受講料は一般債権のため受講生にはほとんど返還されなかったようだ。(その後何らかの救済措置が取られたのか否かは、そこまで調べていないので不明である)
業種は異なるが、10年前と同じ事件が繰り返されたとみることができる。

2)財務会計に関する教育の問題

仮に企業の財務諸表が閲覧できるようになったとしてもまだ問題が残る。一般の消費者の側に「財務諸表を読む能力」があるかどうかという点である。
私自身の経験から、日本の教育体系では、特に理系の場合、簿記や財務諸表にかかわるリテラシーを教わることはなかった。考えてみればこれは極めておかしな話である。
ほとんどの会社は売上高や利益(利益の額だったり利益率だったり)を追求し、その結果を損益計算書という形で表現している。
また、日本のような終身雇用的な考えが色濃く残る場合、正社員はいずれは管理職や役員になる。管理職は経営側の人間であるから、本来、その会社の経営状況や経営目標を把握しておかなければならない。すなわち財務諸表を読む能力が求められる。
ほとんどの社会人に必要とされる能力なのに学校で教わる機会がない。財務諸表に限らずお金に関する知識を学校で教えないのは何故だろうか? (そういう通俗的なことは学校では教えないということだろうか?)
個人的には英語やプログラミング教育よりも、お金に関する知識の方が優先度が高いと思う。誰もが社会に出たときお金に関する知識が必要になる。

お金といえば、先週(2018/1/29)は仮想通貨が話題になった。
仮想通貨取引所大手のコインチェックで、顧客から預かっていた約580億円相当の仮想通貨が不正アクセスされ、社外に流出した。
会社は手元にある資金で損失分を保証すると言っているが、現段階で本当に補填できるのか否かは明らかでない。この問題も財務諸表に絡む。
この会社の財務諸表をみれば、財務状況や手元のキャッシュの額などが推測できるだろう。
仮想通貨はその名の通りお金であり、決済の手段になると思われるが、報道を見た限りでは「投機」の対象にしか見えない(「投資」ではなく「投機」である)。果たして10年後、20年後にはお金として、つまり価値が安定して多くの人が決済手段として使うような存在になっているのだろうか?
この事例からも、やはりお金に関する(何らかの)教育が必要だと思うのだが・・・。
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