2025年問題(2025年の崖より深刻なもの)
IT業界では昨今「2025年の崖」という言葉(警告)が声高に叫ばれている。これは、経済産業省の「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」が発端のようである。 「2025年の崖」とは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した基幹システム(レガシー・システム)が残存した場合、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが遅れ、企業の国際競争力が低下して、結果、日本経済が停滞するという警告である。 この種の警告、レガシーシステムだとか負の遺産だとかは昔から何度も聞かされているので、私自身はさほど驚かない。同じように感じているIT業界の年配者も少なくないのではなかろうか。 90年代にオープンシステム(ダウンサイジング)だとか分散システムだとかがブームになったときも、汎用機(レガシーシステム)や独自システムを使い続けることのデメリットが叫ばれた。 DXに関しては、昨今の事例にRPAが含まれていることに違和感を感じる。RPAは、それぞれが独立したサブシステムを、画面インタフェースを自動化して連結する、すなわち既存の業務フローを是として成り立っているように映るからである。 もちろん、BPRの視点から業務フローを見直して最適化している事例もあるようだが・・・。2025年の崖はITと企業経営に関わる課題であり、主に企業の成長戦略・競争戦略やイノベーションを妨げる問題である。しかし、日本の社会保障には、2025年の崖よりも深刻な問題が内在している。 「社会保障クライシス 2025年問題の衝撃」(山田謙次:著、東洋経済新報社)にその問題の全貌が書かれている。 社会保障の2025年問題は私たちの生活基盤、経済基盤に関わる問題であり、これを放置すれば社会不安を引き起こしかねない。企業にとっても、従業員の生活基盤が不安定だと成長戦略どころではないだろう。 社会保障の2025年問題が起こり得る要因は主に以下の2点にある。 ①団塊の世代800万人を含め、総人口の18%(2,200万人)が後期高齢者になり、医療と介護の社会的費用がピークを迎える。 国連の定義では、高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、高齢化率14%を超えた社会を「高齢社会」と呼ぶそうだ。さらに、高齢化率21%を超えた社会を一般に「超高齢社会」と称するそうだ。 本書には、社会保障制度に係る費用のうち、特に年金給付費と、医療給付費、介護給付費の数字が出ている。年金給付費は、2015年度に57兆円であったものが2025年度には60兆円(+3兆円)と予測されている。同様に、医療給付費は、2015年度40兆円に対して2025年度は54兆円(+14兆円)、介護給付費は、2015年度11兆円に対して2025年度は20兆円(+9兆円)との予測である。 著者は日本の社会保障の主要な問題点を3つ挙げている。 ②に関連して、本書には「国民負担率」の数字が出ている。国民負担率とは、”税金+社会保障負担”の国民所得に対する割合である。1970年の各国の国民負担率は、イギリスが48%、ドイツ41%、フランス47%、スウェーデン55%、アメリカ34%、に対して日本は24%である。 話は少し変わるが、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、過去最大規模の緊急経済対策を策定するそうだ。(2020年3月28日時点の報道) |
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