共通フレーム2007(SLCP-JCF2007)

2023年7月25日

共通フレーム2007は、共通フレーム2013に改訂されているので、「共通フレーム2013」を参照ください。
共通フレーム2007(SLCP-JCF2007 : Software Life Cycle Processes-Japan Common Frame 2007)とは、ソフトウェア開発とその取引に関する作業項目を定義し、標準化したものであり、ソフトウェアライフサイクルプロセス規格(ISO/IEC12207)(JIS X 0160)をベースに、日本独自のプロセスの追加や、拡張などを行ったものである。

(1)共通フレームの構成と階層

共通フレームの概要を把握するためには、共通フレームの構成図を見るのが手っ取り早いであろう。
共通フレームの構成図は下図のとおりであり、冒頭で説明したように、ソフトウェア開発とその取引に係わる作業が 定義されている。
作業は、「プロセス」、「アクティビティ」、「タスク」、「リスト」の4つの階層で定義されている。
下図は、このうち、プロセス・レベルの作業の構造を示したものである。

※ 図は削除しました。

(2)共通フレーム2007で追加されたプロセス

共通フレーム2007では、ISO/IEC12207(JIS X 0160)に対して、以下のプロセスが追加されている。
①企画プロセスと要件定義プロセス
共通フレーム2007では、ISO/IEC12207にはない、企画プロセスと要件定義プロセスが追加されている。
システムを構築する場合は、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアを含めたシステム、さらに関係する業務までを含めて分析、設計する必要があることから、企画プロセスと要件定義プロセスが追加された。
逆の見方をすると、ISO/IEC12207は、ソフトウェア開発に重きが置かれている。

②システム監査プロセス
1985年に策定・公表されたシステム監査基準に則り、一部の企業ではシステム監査法人等によるシステム監査の取引が実施されている。このような事情に鑑み、システム監査プロセスが追加されている。

③契約の変更管理プロセス
開発に入る前の要件定義をきちんと行うことを前提に取引を適正化することが重要である。
しかしながら、環境の変化等で要件やスコープが変わることがある。仕様変更に対して、品質、コスト、期間を、取得者と供給者が合意するためのプロセスが追加されている。

(3)共通フレームの内容

共通フレームの詳細な内容は、オーム社発行の「SEC BOOKS 共通フレーム2007」を見てもらうしかないのだが、具体例がほとんど書かれていないので、少々分かり難いかと思われる。
また、説明文が英語の翻訳であるせいか、少々こなれない日本語表現になっている。
例えば、開発プロセスの「成果」の説明は、
「開発プロセスの実施に成功すると次の状態になる。
(1)ソフトウェア開発の要件が収集され、合意されている。・・・・
(4)開発プロセスでの製品間で一貫性が確立されている。・・・・」
という具合である。
共通フレームに登場するプロセスは、システム開発の経験がある人であれば、その名称から、おおよその内容は推測可能であるが、あまり馴染みがないプロセスも存在する。
その1つが「ドメイン技術プロセス」ではないだろうか。
ドメイン技術プロセスの目的は、
「ドメイン技術プロセスは、領域モデル、領域の基本構造および領域用の資産を形成し、維持することを目的とする。」
とある。
また、ドメイン技術プロセスの成果は、
「ドメイン技術プロセスの実施に成功すると次の状態になる。
(1)ドメインモデル及びドメインの基本構造の表現形式が選択されている。
(2)ドメインの境界及び他のドメインとの関係が確立されている。
・・・・・・」
と書かれている。
以上から、ドメインとは、業務とシステムに関して汎用性がある独立した領域のことだと思われるが、具体例が書かれていないので良く分からない。
推測するに、
スーパーやコンビニ業界における、商品の受発注業務の領域、
製造業における部品の在庫管理の領域、
銀行における勘定系業務の領域、
といった「領域」のことではないかと思われる。

(4)共通フレームで気になった点

共通フレームで若干気になったのは、構成管理プロセスである。
いわゆるバージョン管理に関する記載はあるのだが、ライセンス管理に関する記載がないように見える。最近はソフトウェアのライセンス形態が多様化していることから、バージョンとライセンスの関係を押さえ、ライセンス不足が発生しないように管理すること、あるいは逆に、無駄なライセンスを保有しないよう管理することが重要である。

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