プロジェクト管理の標準化(ISO21500) ~概要編~
ISO21500は、プロジェクトマネジメントの包括的なガイダンスを提供するものであり、プロジェクトマネジメント活動のための「概念」、および「プロセス」について、高次のレベルの説明を提供している。 高次のレベルであるから、詳細までは言及していない。先に記載の通り、コンピテンシーや、技法、ツールは規定の対象外である。また、認証も含まれていない(即ち、規格への適合を審査するために使われるものではない)。実際、この規格書(ガイドライン)は、全体で32ページとコンパクトである。 プロジェクトマネジメントは、ポートフォリオマネジメント、プログラムマネジメントの下部構造に位置付けられている。 ポートフォリオは、事業ポートフォリオのことである。企業が将来の成長に向けて、事業の組み合わせと、経営資源の配分を決める経営戦略的な部分である。 プログラムマネジメントは1つの事業ドメインの位置付けと考えられる。ポートフォリオの下部構造であるから、事業戦略レベルの部分だといえる。 プロジェクトマネジメントはプログラムマネジメントの下部構造であるから、1つの事業領域の中の製品企画プロジェクトや、販売プロジェクト、システム構築プロジェクトなどのイメージであろう。 |
プロジェクトマネジメントの構造 |
ISO21500では、5つのプロセスグループ(下表の列)と10のサブジェクトグループ(下表の行)のマトリックスの中に39のプロセスが定義されている。 プロセスの名称を見ればおおよそどのようなことを実施するかは想像がつくと思うが、特徴的な点として、 ・ステークホルダーの特定、管理がプロセスとして定義されている ・学んだ教訓の収集(Collect lessons learned)がプロセスとして定義されている ・資源サブジェクトグループは、人的資源だけでなく、施設や機械、インフラ、ツールなどが含まれている があげられる。 |
立上げ |
計画 |
実行 |
管理 |
終結 |
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統合 |
・プロジェクト憲章の作成 |
・プロジェクト全体計画の作成 |
・プロジェクト作業の指揮 |
・プロジェクト作業の管理 ・変更の管理 |
・プロジェクトの終結 ・学んだ教訓の収集 |
ステークホルダー |
・ステークホルダーの特定 |
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・ステークホルダーのマネジメント |
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スコープ |
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・スコープの定義、 ・WBSの作成、 ・活動(アクティビティ)の定義 |
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・スコープの管理 |
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資源 |
・プロジェクトチームの編成 |
・資源の見積、 ・プロジェクト組織の定義 |
・プロジェクトチームの開発 |
・資源の管理 ・プロジェクトチームの管理 |
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タイム |
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・活動の順序付け、 ・活動期間の見積り ・スケジュールの作成 |
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・スケジュールの管理 |
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コスト |
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・コストの見積、 ・予算の作成 |
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・コストの管理 |
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リスク |
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・リスクの特定 ・リスクの評価 |
・リスクへの対応 |
・リスクの管理 |
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品質 |
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・品質の計画 |
・品質保証の遂行 |
・品質管理の遂行
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調達 |
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・調達の計画 |
・供給者(サプライヤ)の選定 |
・調達の運営管理 |
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コミュニケーション |
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・コミュニケーションの計画 |
・情報の配布 |
・コミュニケーションの管理 |
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(補足)
冒頭に記したポートフォリオマネジメントは、2015年7月1日、ISO21504として制定された。 |
2018年12月 補足: ・プログラムマネジメント: ・プロジェクトガバナンス: |
2018年11月3日 追記:●ISO21500(プロジェクトマネジメント)やISO21503(プログラムマネジメント)、ISO21504(ポートフォリオマネジメント)の実行環境を説明するフレームワークと、各基準がどのように関係しているかを包括的に規定する、ハイレベルの新たな基準(Overarching Documennto)の検討が始まっているそうだ。 |