インスタグラム 野望の果ての真実
「インスタグラム 野望の果ての真実」(著:サラ・フライヤー、訳:井口耕二、ニューズピックス)は、インスタグラムの創成期から、フェイスブックに買収されて以降の成長の様子と、組織の内情を(関係者への取材を基に)記した書籍である。 私自身は、SNSのアカウントを有しているものの、ほとんど利用していない。従って、本書に描かれているような、SNSに対する若者やセレブの熱狂は今ひとつピンとこない。 一方で、フェイスブック社内の組織間の対立や、競合するSNSベンダーとの熾烈な戦いは、まさに生き馬の目を抜くような凄まじさで、アメリカにおけるスタートアップ企業の実態を浮き彫りにしている。 スタートアップ企業で働く技術者は寝る間もないほどの忙しさで、常に社外の競争相手との闘いに晒されており、市場で生き残るのが如何に大変なことなのかが分かる。 そして、生き残りをかけた闘いは「運」にも左右されているように見える。 本書によれば、シリコンバレーのスタートアップは90%以上が失敗に終わるそうだ。インスタグラムは、「インスタント」と「テレグラム」を掛け合わせた造語である。 この会社は、ケビン・シストロムとマイク・クリーガーの二人が創業し、インスタグラムのサービスそのものは2010年に一般公開されている。 このサービス(写真を投稿してネット上に公開するサービス)は、アップルのアプリストアにおけるカメラアプリ部門で第一位となる大ヒット商品になる。 インスタグラムの成功要因は、モバイル革命(いわゆるモバイルファーストの始まり)と、機能を徹底的にシンプルにした点にあるようだ。 いまひとつ成功要因をあげるならば、インスタグラムはフェイスブックに買収された後も(ある一定期間は)、独立した会社のように組織運営を続けることができ、かつフェイスブックが有するインフラをふんだんに使えた点にあろう。 本書によると、インスタグラムのような新興のSNSが成功するステップは、 インスタグラムがいつまでも無収入であることは許されない。 インスタグラムの創業者の二人は、経営方針や事業運営の方針について、ザッカーバーグと対立する。 IT技術者からみたSNSの開発方針はアジャイル開発そのものである。 |
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2021年11月4日 追記: フェイスブックは、2004年の創業以来使っていた社名を「Meta(メタ)」に変更した。 「メタ」は、今後同社が注力する「メタバース」に由来するようだ。 「メタバース」は、VR(仮想現実)端末などを使って、離れた場所にいるユーザ同士が、ゲームや買い物などに参加できる仮想空間である。 私が想像するに、アニメ「竜とそばかすの姫」の舞台になっている仮想空間のようなものだろう。 ザッカーバーグは、10月28日のイベントで、 「将来は数十億人がデジタル上で数千億ドルの買い物をする場になる」 「(メタバースが提供する)多くのものは今後1,2年でできるものではない」 と語り、メタバースが長期的な構想になるとの考えを示した。 アメリカではフェイスブックの疑惑を追及する報道が過熱しているようだ。 フェイスブックに対する風当たりが強まっている背景には、元社員のフランシス・ボーゲン氏による内部告発があったようだ。 ボーゲン氏は内部告発に至った理由を、 「公共の安全よりも自社の利益を優先し、人々の生命を危険にさらしている会社の決定に、次第に危機感を募らせた」 と自らのウェブサイトで説明している。下院エネルギー商務委員会の民主党議員らは、利用者による投稿内容にネット企業が責任を負わなくてよいとする「通信品位法230条」の改正案を提出した。 利用者の身体的、精神的被害につながるコンテンツを推奨するアルゴリズムを意図的に使った場合、230条による保護をなくすとしている。 (以上、朝日新聞2021年10月30日の記事をもとに記載) |
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