NFTの教科書
「NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計までデジタルデータが資産になる未来」(編著:天羽健介、増田雅史、朝日新聞出版)は、NFTビジネスの全体像と、法律、会計、税務との関連を網羅的に解説した書籍である。 私を含め、NFTの全容を知りたいと思う読者に適した入門書になっている。 最初にNFTとは何か? を記す。 NFT(ノン・ファンジブル・トークン)は、(現時点で訳語は定まっていないようだが)「非代替性トークン」と呼ばれる技術であり、分散台帳・ブロックチェーン技術を利用している。 NFTも暗号資産(例えば、ビットコイン)もブロックチェーンを使用しているが、NFTは暗号資産と異なり、ブロックチェーンのなかに個別の識別サインを記録することができる。 この個別の識別サインにより、世界に一つだけのデジタル資産であることを証明(認識)できる。この特徴から分かるように、NFTはIP(知的財産)ビジネスとの親和性が高い。現在NFTは、ゲームのアイテムや、デジタルアート、トレーディングカード、音楽、各種の会員権、ファッションなどの領域で、急速に新規ビジネスが立ち上がっている。 また、最近話題になることが多いメタバース(インターネット上に構築された仮想空間)のなかでも使用されることが想定されている。 但し、NFTを利用したビジネスは立ち上がり始めたばかりなので、実証実験を行いながら進めているものも多い。さらに、法律、会計、税務などの制度面が追いついていないのが実情である。NFTの利点として本書では4つの特徴をあげている。 ①唯一無二の権利などを証明できる(正確には識別できる) ②価値そのものを送付、移転することができる ③コピーや改ざんができない ④価値の移転を追跡できる (②~④の特徴はビットコインなどの暗号資産も同じだろう) ③の特徴には注意が必要のようだ。例えば、デジタルアートなどデータ量が大きいものはブロックチェーンの外側(例えば、AWSのストレージなど)で管理する場合が多いようで、この場合はデータの複製が可能な場合がある。 実際、データを違法にコピーしてNFTとして登録するなどの違法行為(著作権侵害)もあるようだ。 NFTを発行するために世界で最も使われているのは、イーサリアム団体が提供する「ERC-721」という規格である。イーサリアムは独自のスマートコントラクト(ブロックチェーン上で行われる取引行動を自動的に実行するプログラム)によって、そのなかに付随する契約内容を内蔵することができる。 NFTの主な技術課題は、先に紹介したデジタルアートなどの画像データの管理上の問題とトランザクションのスケーリングの問題のほかに、NFTマーケットプレイス間の互換性の問題(インターオペラビリティ:相互運用性のことだと思う)と、環境問題への配慮である。 NFTと法律との関係については、先にも記したように制度面が追いついていないのが実情であるが、本書では賭博、景品表示法、資金決済法、金融商品取引法との関連を説明している。 |
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