プロジェクト管理の標準化(ISO21500) ~何が標準化されたの? 編~

2023年7月27日

何が標準化されたのか・・・

プロジェクト管理の枠組みが、国際規格ISO 21500として標準化された。
国際規格なのでいずれはJIS規格になる可能性がある。(その後、JIS Q 21500:2018としてJIS規格になった)
プロジェクト管理の標準化というと随分と漠然としている。一体何が標準化されたのか?と思う向きも多いのではないだろうか。
形のあるモノの場合はイメージしやすい。規格に合ったオスネジとメスネジであれば、製造した企業がそれぞれ異なっていてもぴったりと合うであろう。
ところが管理(マネジメント)という人間・組織の行動を対象とした規格というのは、そもそも標準規格として成立するのか疑問に思ってしまう。これはプロジェクト管理に限らず、サービスを対象とした標準規格(へのアプローチ)全般に言えることである。

結論をいうと、ISO21500はプロジェクト管理活動に必要なプロセス(作業や手続き)を国際標準として規定している、ということである。管理するためには、管理対象を測定し、定量的または定性的に表現する必要がある。例えば、進捗管理であれば、進捗の予定と実績を成果物の分量などで測定し、ガントチャートなどに表現する。ISO21500では、測定するプロセスは定義されているが、測定に必要なツールや表現するツール(手段)までは規定されていない。
従って、「管理するためにはこういうことをしないといけない(目的と作業)」ということは書かれているが、手段は書かれていないので、そこにはプロジェクトそれぞれで工夫・改善の余地がある。また、プロジェクトによっては作業そのものにも改善の余地が残されていると考えられる。全てを標準規定通りに行うのではなく、プロジェクトに合わせて変更すること(テーラード)も必要になってくる。

では、標準化することにどのような意味(価値)があるのだろうか。
一つは、管理作業の漏れをチェックできるという点があげられる。今一つは、プロジェクト管理に関わる用語(概念)が統一されたという点である。用語を統一することで、関係者間で概念のずれ(概念フレームのずれ)を少なくすることができる。
一方、負の側面としては、「規格通りに管理作業を進めたが、結果としてプロジェクトが上手く行かなかった。管理側としては問題がなかった。」という逃げ口上が成立し得る? ・・・まあ、これで逃げられるかどうかは分かりませんが・・・。

その他のプロジェクト管理の標準

日本ではプロジェクト管理の標準としてPMBOK(A Guide To The Project Management Body Of Knowledge)が知られている。
PMBOKは米国に本部を置くPMI(Project Management Institute)が策定したものである。2012年時点で、PMBOKは近々に第5版が発行される見込みであり、ISO21500の制定を受けた改訂が入るものと思われる。
一方、ヨーロッパには、スイスに本部を置くIPMA(International Project Management Association)が発行するICB(IPMA Competence Baseline)がある。
ICBはその名の通り、プロジェクトマネージャーのコンピテンシーや人的能力の定義に重きが置かれている。日本のITSS(ITスキル標準)に近いものと思われる。(なお、ISO21500にはコンピテンシーに関する細かい規定はない)
また、イギリス規格協会(BSI)が定めたBS6079は、ISO21500を策定する際の議論のベースになっている。

「ISO21500の概要」に続く

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