レビュー指摘件数密度
「ソフトウェア開発データ白書」(IPA発行)の最新版(2018-2019)が2018年10月に発行されたので、最新版の品質指標値を引用する。 以下の引用を見ると「ページ当たりのレビュー指摘件数」の標準偏差に比べて、「SLOC規模あたりのレビュー指摘件数」および「FP規模あたりのレビュー指摘件数」の標準偏差が大きい(データのばらつきが大きい)。 特に詳細設計の「SLOC規模あたりレビュー指摘件数」の標準偏差は顕著である(中央値と平均値の差が著しいことからもバラつきの大きいこと分かる)。 従って、これらの指標値を援用する場合は注意が必要である。 |
ページあたりのレビュー指摘件数 [件/ページ](2018-2019) | |||||
P25 | 中央値 | P75 | 平均 | 標準偏差 | |
基本設計 | 0.117 | 0.276 | 0.764 | 0.654 | 1.103 |
詳細設計 | 0.072 | 0.164 | 0.416 | 0.304 | 0.393 |
SLOC規模あたりのレビュー指摘件数 [件/KSLOC](2018-2019) | |||||
P25 | 中央値 | P75 | 平均 | 標準偏差 | |
基本設計 | 1.23 | 2.657 | 5.723 | 5.953 | 11.699 |
詳細設計 | 8.4 | 16.3 | 34.3 | 1387.1 | 21364.4 |
FP規模あたりのレビュー指摘件数 [件/KFP](2018-2019) | |||||
P25 | 中央値 | P75 | 平均 | 標準偏差 | |
基本設計 | 83.5 | 171.6 | 311.2 | 228.2 | 209.4 |
詳細設計 | 73.2 | 228.7 | 365.3 | 339.2 | 521.2 |
旧版のデータは以下を参照下さい。
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ソフトウェア開発の現場では、品質を高めることを目的に品質レビューが行われている。 品質レビューは、誰がレビューを行うかによって、社内レビューと社外レビューに分けることが出来る。 品質レビューは、共通フレーム2013(SLCP-JCF 2013)では「共同レビュープロセス」として定義されている。 品質レビューには幾つかの観点がある。 品質レビューに関連して、レビュー指摘件数密度という品質メトリクスがある。 ※ 「ソフトウェアデータ白書(2016-2017)の数値を併記する。
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これは、基本設計書のレビュー指摘件数が、平均では1ページ当たり0.508件(白書(2016-2017)では0.580)であるという意味である。 この数値を見て多いと思うか少ないと思うかは、人によってまちまちかもしれないが、ここには幾つかの前提が漏れている気がする。 それは、①ドキュメントの記載粒度、②レビューアーの態勢、③指摘件数をカウントする際の基準の問題、である。 ①ドキュメントの記載粒度 ②レビューアーの態勢 ③指摘件数をカウントする際の基準の問題 |
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2018年6月 その他のメトリクスに関する追記 レビューに関するその他の指標について、 「定量的品質予測のススメ」(編:情報処理推進機構、発行:オーム社)を参考に以下記載する。なお、この書籍では、レビュー指摘件数密度は、「レビュー指摘密度」という名称で定義されている。 レビュー指摘密度以外の指標の「値」については統計的な数値(標準的な値)は開示されていないようである。すなわち、ベンダー企業やユーザ企業の各社が蓄積した過去データをもとに標準値を定め、プロジェクトの中で使用している。
いずれにしろ、レビューは関係者のスキルによってバラツキが大きくなるので、測定データの精査が重要になってくる。 レビュー工数密度 = レビュー工数 ÷ レビュー対象規模
レビュー指摘効率 = レビュー指摘件数 ÷ レビュー工数
レビュー工数密度は、レビューにどれだけの工数をかけているかを表す。
レビュー指摘効率は、工数当たりのレビュー指摘能力を表している。 ・レビュー指摘密度が低いときは、レビューの質に問題がないか(例えばレビューが形式的になっていないか)を点検する。
・レビュー工数密度が低いときは、適切な時間と、適切なレビューアーでレビューを実施しているかを点検する。 ・レビュー指摘効率が低いときは、レビューアーの能力、あるいはレビューアーの体制に問題がないかを点検する。 ・レビュー工数密度が小さいにもかかわらずレビュー指摘密度が高いときは、品質が悪いと予測する。 ・レビュー工数密度が高いにもかかわらずレビュー指摘密度が小さいときは、プロダクトの品質が良いか、あるいは、レビューの質が低いと予測する。 |
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注) 「続 定量的品質予測のススメ」では、「レビューでは、レビュー工数(レビューア数*時間)よりも、レビュー実施時間(レビュー時間)とレビュー指摘件数の方が、より相関が強いという見解がある」ことが指摘されている。 内部レビューや公式レビューにおいて、レビューアーが複数人いる場合、実際に指摘をする人が偏っている場合や、教育を兼ねてレビューアーに初学者を参加させる場合もあるだろうから、このようなケースでは、レビュー工数よりも、レビュー実施時間とレビュー指摘件数の相関が強いのかもしれない(あくまで推測です)。 |
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