重松清「カシオペアの丘で」

人間は不条理な事件や事故に遭遇することで、生と死に向き合うことがある。
平穏な日常が今日も明日も、そして将来も続くと考えていたとき、事件は唐突に起きる。カシオペアの丘で
俊介は医師から肺がんであることを告げられる。余命は半年から1年。まだ39歳の若さ、息子はまだ小学生である。
川原さんは娘の真由ちゃんを殺害される。
小学校1年生の真由ちゃんは、母親とショッピングセンターに来ていた。夏休み最後の日、新学期に備えて文房具を買うために。
そこで事件が起きる。母親が夕飯の買い物をしている隙に真由ちゃんが何者かに連れ去られた。

俊介も川原さんも、本人にとっては不条理な出来事である。不条理な出来事をきっかけに、生と死に向き合う。
重いテーマだが作品に陰鬱さはない。むしろ全編を通して作者の温かいまなざしが感じられる。陰鬱にならない今一つの要因、それは、登場人物が皆、相手を思いやる優しい気持ちの持ち主だからだろう。
作品の後半では赦しが一つのテーマになっていると思う。

物語の舞台は、北海道の北都市と呼ばれる架空の街(とはいえ、モデルになった街は実在するそうだ)。
かつては炭鉱で栄えたが、今はすっかりさびれてしまった。
この街で生まれ育った、シュン(俊介)とトシ(敏彦)、ユウ(雄司)、ミッチョ(美智子)の4人は幼馴染。
小学校4年生の4人は名もない丘の上に集まり、雲一つない星空を見上げていた。無数の星がみえるこの日の夜空が、4人にとって特別な日になった。
4人はこの丘をカシオペアの丘と名付けた。

物語は、幼女の誘拐とその後の殺害というかなり衝撃的な事件で幕を開ける。
カシオペアの丘に集った幼馴染の4人は既に大人になっている。
いったいこの物語はどういう展開になるのか、・・・と思わせるが、中盤以降は登場人物の心の変化が丁寧に描かれていく。
物語終盤の心情の記述は、やや感傷的過ぎると感じる人がいるかもしれない。
そして、登場人物たちが抱えるそれぞれの秘密が次第に解き明かされていく。

ストーリー運びの巧みさ、登場人物が持つ心根の優しさ、どこかノスタルジックなストーリー、これらは著者の他の作品にもみられる共通点だと感じる。

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