なんでもAI(人工知能)
最近は、ITの専門誌に限らず、新聞やテレビでも連日のようにAI(人工知能)が取り上げらるようになった。まさにブームの絶頂であるが、AI(人工知能)の定義自体が曖昧で、少々漠然とている。人間の知能に匹敵する何か凄いものが既に存在しているか、あるいは近い将来実現されると考えている人も多いのではなかろうか。 AIと同じく定義が曖昧なものにビッグデータがある。 しかし、こちらは2020年までのIT政策の基本方針を示す「世界最先端IT国家創造宣言」にも取り上げられているから、今やこの言葉は完全に市民権を得たと言えそうだ。最近は、AIの関連技術としてビッグデータが取り上げられることもある(本来は違うはずだが・・・)。 いずれにしろ、政府の基本方針レベルの話などに、AIやビックデータ、さらにはIoTなど、IT業界のジャーゴンを羅列するのはいかがなものか(かえって薄っぺらなものに感じられる)。 以前に、「なんでもビッグデータ」と書いたが、最近は「なんでもAI(人工知能)」という様相を呈している。 例えば、AI家電やAI住宅でWeb検索すると、いろいろなものが出てくる。 ・利用者が設定するモードや温度を学習し、自動調節するエアコン。 (単に過去の操作履歴データから、使用頻度の高いものを抽出しているようにも見えるが・・・) ・AIがユーザーに合わせたメニューやレシピの提案をしてくれるオーブンレンジ。 (単にユーザーが口頭で指定した条件をもとに、レシピ情報を検索しているように見えるが・・・) ・上記と同じく、レシピを提案する冷蔵庫 ・AIがコリの具合を診断して、こっている箇所を念入りに揉みほぐしてくれるマッサージ・チェア (どういう仕組みか良く分からないが、センサーからの情報と、コリ具合のデータとを照合している?) ・不審者を認識する住宅用の監視カメラ (人間の顔を画像認識して、事前に登録された人物の顔データと照合しているようである) あるメーカーは、ディープラーニングの機能を持つ冷蔵庫や洗濯機、ロボット掃除機などを2017年にも発売すると言っている。さらに2017年はノールックAI家電というのが流行るらしい。これは人間が音声で家電に指示をだすもののようだ。(単にユーザインタフェースが操作ボタンから音声認識に変わっただけのようにも見えるが・・・) 結局のところ、音声認識、画像認識、機械学習、深層学習の技術を利用したものをAI家電と称しているようだが、なかには、なんでこれがAIなの? と思われるものもある。 まさに「言ったもん勝ち」の百花繚乱状態である。 AIの応用分野で最も話題になることが多いのが自動運転であろう。 @ITの記事(トヨタが2016年に設立した自動運転関連技術研究開発組織、Toyota Research Institute(TRI)でCEOを務めているGill Pratt氏の講演に関する記事)によると、 自動運転にはレベル1からレベル5までがあるそうだ。 「どこかの企業が、『2020年代前半に自動運転車を路上に送り出したい』というとき、その企業が意味しているのはおそらく(注:完全な自動運転を意味するレベル5ではなく)レベル4だ」 現状は、どの企業も、完全な自動運転を意味するレベル5からは「ほど遠い位置」にいるそうである。 「なんでもAI」という状況に対して苦言を呈する人たちも出現している。 例えば、ガートナー ジャパンは、AIに対する誤解を10項目あげている。そのなかで、非常に多いのが「すごく賢いAIがすでに存在する」という誤解だという。 また、「AIと呼ばれる単一のテクノロジが存在するという誤解」も、納得感のある箴言である。 AIについて報道するときは、画像認識とか機械学習とか、利用している技術領域を特定して話すべきではないかと思われる。また時間軸(今できているのか、数年後にできるのか、あるいは遠い将来の話なのか)も明確にしてほしいものである。 以前にも紹介したが、東京オリンピックが開催された1964年当時、人工頭脳カラーテレビというのが売り出されていた。 あれから半世紀、(多分)今度は人工知能テレビが売り出されるに違いない。「人工頭脳」と「人工知能」、どちらが凄いのかいまひとつ分からないが、どちらも誇大広告じみている点は共通している。 |
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