2013年 12月

人類は既に地球の環境収容能力を超えてオーバーシュート(需要超過)している。
良く知られているように、大気中のCO2が増えれば気温が上昇する。
温室効果ガスの年間排出量は、既に世界の海洋と森林が吸収できる量の2倍になり、温室効果ガスの大気中濃度が上昇している。
年間の温室効果ガス排出量が既に環境収容能力を超えているということから、今以上に経済成長を追及することは、破滅に向かう行為だということになる。

例えば、自動車産業は、今後中国や東南アジアへの販売台数を伸ばしていく考えであろうが、地球全体で自動車の保有台数を更に増やし続けることは、環境汚染や資源枯渇を増幅する行為になりかねないということである。
実際、中国は急速な経済成長を続け、自動車の販売台数も増加し続け、昨今では新車の販売台数が年間2,000万台を越える規模になっている訳だが、その一方で大気汚染物質の増加に悩まされている。(最近は日本の天気予報でも、各地のPM2.5の濃度を放送するようになった)
このような環境汚染や、それが引き起こす気候変動が地球規模に拡大し続けると、前回紹介した「気候変動の自己増幅」を早める可能性がある。

オーバーシュートの実態を見えなくしている要因のひとつに、GDPの計算式があるという。
GDPの計算には、環境汚染や資源枯渇、生物多様性の喪失といったものが計上されていない。
先ほどの自動車産業の例で言えば、大気汚染物質の増加が考慮されていないということである。
大気汚染物質を除去するのに必要な装置と、装置の運転に掛かる費用を計算に含める必要があるという指摘である。

また、経済学でいう限界費用と限界利益にも目を向ける必要がある。
自動車を追加で1台生産するのにかかる費用と、そこから得られる利益を考えたとき、利益が費用を上回る場合にのみ生産が行われるべきである。
そうでなければ、利益よりも損失の方が多くなる。
この費用を企業レベルで見た場合は、原材料費や部品費、外注費などの製造原価と、販売費などが計上されるわけであるが、社会レベルで見た場合には、先ほどの大気汚染の洗浄に関わる費用も計上すべきである。
このように社会レベルで見たときには、既に、限界利益よりも限界費用の方が大きくなっている可能性がある。

本書では、ハーマン・デイリー氏の論考が引用されている。その中の一節。
「私たちは過去40年で成長の限界に達したが、それを故意に否定した。その結果、大半の人は深刻な害を被ったが、成長というイデオロギーの旗を振る一握りのエリートだけは得をした。なぜなら彼らは、成長がもたらす恩恵を私物化し、それがもたらす、さらに大きなコストを社会に押しつけたからだ。」
今の日本も経済成長を信奉して投資と消費を拡大する方向を目指している訳だが、得をするのは一部の企業や富裕層だけで、個人の所得格差がますます拡大し、環境へのダメージが増える可能性が大きいのではないだろうか。

雑感へのINDEX

Update

2013年12月
« 11月   1月 »
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

Navigation