2015年 3月 14日

経済界には解雇規制を緩和するよう求める声がある。その主な理由は、企業の新陳代謝を加速して競争力を高めたい、労働市場の流動性を高めたい、グローバルなビジネス環境において外国人を含めた即戦力の中途採用を増やしたい、などである。
溝上憲文著「非情の常時リストラ」には、このあたりの事情が詳しく書かれている。なお、この本の著者は解雇規制緩和には否定的な見解である。この本を参考に日本の労働市場の歴史的背景と問題点を見ていく。

先ず、日本は正規社員の解雇が困難であり、解雇する際のルールが不明確であるとの論議がある。労働契約法では、「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利(解雇権)を濫用したものとして、無効とする」とある(いわゆる解雇権の濫用である)。
判例では整理解雇が客観的合理的であるためには4つの条件を満たす必要がある。1つは経営上の必要性があるか、2つ目は解雇を回避するための努力を行ったか、3つ目は解雇対象者の人選が公平か、4つ目は労働組合または労働者と協議を行ったか、である。
日本は雇用を守るという側面が重視されてきたため、特に無期契約の正社員を解雇するのが難しい。この雇用維持型の解雇ルールを、よりグローバルなルール、即ち労働移動型のルールに転換せよというのが経済界の主張である。
そして、労働者が解雇によって被る不利益は、一時金などの金銭によって補うという考えである。会社と労働者の双方が納得する解雇の落としどころとは、結局のところ金銭による解決である。(しかし、解雇に至る事情や背景は千差万別であるから、補償金の額を法律等で一律に決めるのは難しいという議論もある)

日本企業の賃金制度は1946年に日本電気産業労働組合が獲得した電算型賃金体系に始まるという。その特徴は、賃金の4分の3が、年齢と家族数と勤続年数で決まる完全年功型賃金である。
この時代の給与の考え方のベースは、生活保障である。労働者は入社後、年を経るにつれて結婚、出産、子供の教育、マイホーム取得と必要な金銭の額が増えていく。このような一般的なライフプランを考えると、年功型賃金体系は理に適っていたと言える。
また、従業員の生活の安定を図り長く働いてもらうことが、ひいては企業の発展にもつながるとの認識が労使双方にあった。
その後1970年代に広がったのが職能資格制度である。これは、労働者の職務遂行能力に応じて賃金を支払う制度である。この制度の導入で完全年功型賃金はなくなるはずであった。しかし、制度を運用するなかで降格がほとんど行われなかったため、実質的に年功型賃金と変わらない制度に変質していった。
職能資格制度の欠点は、一般的に職務遂行能力が経験年数に比例して高まると考えられたこと、および高い能力が必ずしも高い成果をもたらすとは限らない点である。
そしてバブル崩壊後の90年代後半に登場したのが成果主義である。日本企業が本格的な人員削減を始めたのもこの頃である。97年、98年、北海道拓殖銀行の経営破たん、山一證券の廃業、日本長期信用銀行の一時的国有化などが続く。そして経営危機を回避するためにはリストラは避けて通れないものとなっていった。
従業員の雇用を守るよりも、株主利益を守る方が優先された。このような時代背景の中で導入された成果主義も、運用する中でいろいろと不都合な点が出てきて、結局、給与に占める成果部分のウェイトを減らす企業が相次いだ(結局のところ年功型の賃金体系が残ったわけだ)。

そして近年導入が進んでいるのが「役割給」である。今までの制度が従業員の能力や資格などの「人」を基準にしてきたのに対して、役割給は「仕事」を基準に賃金を決定するものである。即ち、年齢や能力に関係なく、労働者が従事している役割に着目し、同じ役割であれば給与も同額とする考え方である。
役割給のもとでは役割を全うできない従業者は降格される。企業にとって、降格できる(=賃金を下げることができる)点がこの制度の大きなメリットである。
著者は、業績が低迷する企業では、賃金の抑制や削減が可能な役割給の導入が進んでいくとみている。

国内需要が縮小しグローバル競争が激化すると、スキルの高い即戦力が必要になる。企業はスキルの高い人材を外部から調達し、スキルの低い人材と入れ替えたいと考える。企業が新しい事業領域に進出する場合も同様のことが言える。新しい事業領域に適した人材を労働市場から調達し、撤退する事業に従事している人材は解雇したいと考える。
さらに、グローバル化を進める企業では、賃金体系を標準化する必要があるが、この時に日本に旧来からある年功型賃金制度が障害となる。現地法人の日本人社員は年功で賃金が上昇していくのに、現地採用の社員は成果が出ないと給与が上がらない、というのでは公平性に欠けるからだ。

最後に、各企業が新卒採用に求める資質・能力に関して、著者による分析結果が出ていたので引用する。(新卒に限らず、昨今の企業が求める人材像と符合する部分もあると思われるので参考にされたい)
①チャレンジ精神(変革する力、バイタリティ)
②チームワーク力(共感力、チーム志向)
③コミュニケーション力(論理的思考、伝える力)
④リーダーシップ力(周囲を巻き込む力、主導力)
⑤主体的行動力(自律的アクティビティ、やり抜く力)
⑥グローバル素養(異文化受容力、語学力)

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