2016年 1月 9日

黒野伸一「限界集落株式会社」は、2011年に単行本が発行され、2015年にはドラマ化もされたベストセラー小説である。
農業がブームと騒がれたのは2008年~2010年頃であろうか。当時はブームとは裏腹に、農業経営に関する多くの課題があぶり出されたものである。農業の担い手不足、耕作放棄地の拡大、農地集約の限界、農家の高齢化、などなど。限界集落株式会社
農商工等連携や6次産業化でいくつかの成功事例はあるものの、多くの地域で、これらの課題は今も残っていると考えられる。

2008年7月、農商工等連携促進法(中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律)が、施行された。この法律は、中小企業者や農林漁業者が一次、二次、三次の産業の壁を越えて有機的に連携し、新商品の活用や販路開拓等を促進し、もって地域活性化を促すことを目的にしている。
この法律の施行で多くの企業が農業への関心を高めた。さらに、2009年12月改正農地法が施工され、法人が農業に参入する際の制限が緩和された。
それでも農業生産法人になるための要件は、通常の株式会社と比べ、まだまだ制限が多いという。

前置きが長くなったが、この小説は当時の時代背景を上手く取り込んだ作品だといえる。東京からBMWに乗ってやってきた主人公の優。彼はアメリカでMBAを取得した経営コンサルタントだが、農業の経験は全く無い。
その優が、過疎化と高齢化、耕作放棄地の拡大などの課題を抱える農村にやってきて、村の人たちを巻き込みながら村の活性化に取り組むというストーリーである。
本の帯に地域活性エンターテインメントとあるとおり、波乱あり、人情話あり、色恋沙汰ありのドラマチックな仕立てで気軽に楽しめる内容になっている。もっとも、営農組織の立ち上げから事業化の目途がたつまで、ちょっと上手く行き過ぎではないか? と思うところもある。
本書では触れられていないが、農業には農業簿記というものがあるそうだ。農業簿記では、工業簿記と同じように製造原価報告書を作成する。農業の財務会計が他の業種と大きく異なる点は、補てん金や交付金の多さである。
そして、補てん金や交付金の種類によって会計処理も異なってくる。本来事業からの収益である営業損益が赤字であっても、交付金によって経常損益が黒字になるといったケースもあるようだ。

6次産業化とは、自らが生産した農作物を自らが加工し、自らが販売することで農家の所得向上を目指すものである。6次産業化の効果は、経済効果のみならず、地域の環境保全や伝統文化継承などにも繋がる。地域のいたるところで6次産業化の取組みが行われているが、本書にもあるとおり、一番の課題は販路開拓のようである。

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